#01
Project Story

10万人に1人の希少難病!
情熱が加速する。
治療薬との同時上市。

Project『AAV9』
先天性遺伝子疾患であるSMA(脊髄性筋萎縮症)の遺伝子治療薬・ゾルゲンスマのコンパニオン診断薬を開発するプロジェクト。抗AAV9抗体価を検出するELISAキットを米Quest社から導入し、治療薬(ゾルゲンスマ)の日本上市と足並みを揃えることが求められた。2019年6月に始動し、2020年5月に製品化、同年8月に保険収載。
Outline
SMA(脊髄性筋萎縮症)とは、脊髄前角細胞の変性・消失によって進行性に筋力低下と筋萎縮を呈する運動神経疾患。指定難病であり、乳児期早期に発症する重症型から、健康な方とほぼ同様の生活をおくることができる型まで、程度は多岐に渡る。ゾルゲンスマは2歳未満のSMAの遺伝子治療用製品として製造されたが、その投与は抗 AAV9抗体が陰性の患者に限られるため、日本におけるゾルゲンスマの日本上市と同時期にコンパニオン診断薬が必要とされた。本キットはMBLのコンパニオン診断薬開発受託サービスによって開発された製品であり、米国Quest Diagnostics社より技術移管を受けた。

※コンパニオン診断薬:効果を示すまたは、副作用のリスクの大きい患者さんの特定や、適正な投与量を判断するために用いられる体外診断用医薬品。

Member

  • 伊藤 裕太
    営業本部 本部長
    2013年入社
  • 黒田 慶子
    研究開発本部 本部長 兼 執行役員
    1996年入社
  • 柴山 真由美
    技術生産本部 製品原料部
    2000年入社
  • 荒川 佳穂
    研究開発本部 診断薬開発ユニット
    2017年入社
  • 高浪 貢士
    技術生産本部 生産部
    2007年入社
  • 榑井 俊介
    信頼性保証部 品質管理室
    グループリーダー
    2001年入社

01主要メンバーが渡米

プロジェクト始動直後、
主要メンバーが渡米。

薬剤の発売に合わせて診断薬化する必要があったため、プロジェクト発足から薬事申請まで3ヶ月という非常にタイトなスケジュールが求められた。進行の無駄を省くため、プロジェクト発足後の2019年7月には主要メンバー5名が1週間渡米し、Quest社の開発および製造現場を視察した。

柴山開発責任者は黒田さんが務め、実務を私と荒川さんが担当しました。技術トランスファーのため研究開発部が現地に向かうことは珍しくありませんが、本件では品質管理室の榑井さん、生産部の高浪さんなど、製品化に関わる主要メンバーが同行した点が異例でした。

渡米メンバーを決定したのは、プロジェクト指揮をとった伊藤である。

伊藤私はプロジェクト完遂のために全体スケジュールを管理し、関係各社と社外交渉を行う立場でした。初期段階の渡米によって各メンバーが試薬の性質を理解し、最終製品をイメージしておくことで、薬事申請までのスピードを大幅に短縮できると考えました。

生産部、品質管理室としても、イレギュラー対応で最速進行を支えた。

高浪通常は開発部から検証データが用意されてくるのですが、今回はスケジュールがタイトであったため、生産部と開発部が協同してデータ取得を行いました。このようなことが実現できたのは、米Quest社に実際に赴き、測定の全容が把握できていたからであると思います。ゴールがイメージしやすかったと実感しました。

榑井品質管理は製品化の最後の関門であり、スケジュール面でのプレッシャーを感じていました。しかしながら、アッセイを理解するため、初動時からプロジェクトメンバーと密に情報共有を行っていました。結果、イレギュラーな事態にも品質管理の見地からすぐに意見できたことは良かったと感じています。
※アッセイ:検体の存在、量、または機能的な活性や反応を、定性的に評価、または定量的に測定する方法。

当時入社3年目の荒川にとってもこの渡米は印象的だった。

荒川プロジェクトが始動したのは品質管理室から開発部へ異動した直後の時期でした。渡米は現地の研究者たちと直接コミュニケーションがとれ、非常に有意義な時間だったと思います。開発中は困難もありましたが、目の前の作業が必要であることを認識していたので、迷いはありませんでした。

インタビューの様子

02MBLならではの価値

瞬発力/信頼性/高品質を備えた、
MBLにしかできない案件。

ゾルゲンスマは既にアメリカでその有用性が認知されており、日本でも医療現場が待ち望んでいる状態だった。SMAは不可逆的に病状が進行するため、早期の診断、早期の治療が重要視された。

伊藤様々な要因から急遽日本に合わせた診断薬の製造が必要となった結果、MBLのコンパニオン診断薬開発受託サービスに依頼をいただきました。短納期でも品質を保つことを前提に、診断薬業界での信頼性が高いMBLにしかできない案件であったと自負しています。

黒田短期集中で推し進めながらも、当然データの間違いは許されません。二重三重のチェックを行いながらの工程ではありましたが、柴山さんがリーダーシップを発揮し、荒川さんが短期間で劇的に成長したのを目の当たりにし、メンバーにとっても非常に価値あるプロジェクトだったと感じています。

試薬が完成しても、製品化には様々な側面からの検証、各種申請が必要となる。

柴山診断薬はウイルスの殻を利用するため、遺伝子組換え生物の使用を規制するカルタヘナ法に準拠した申請を行う必要があり、この点も苦労しました。

榑井とにかく上市を早める必要があったため、最低限の製品有効で発売を行いました、発売後、延長のための試験を繰り返し実施した点も印象深いです。時間経過と共に性能の有効性を確認し、その都度使用期限を伸ばす、というあまり例を見ない経験ができたと思います。

高浪進行中は開発・製造・品質管理というそれぞれの立場で意見が異なる場面もありましたが、その度に忌憚なく言い合える信頼関係があったおかげで、より良い結論を導くことができたと思います。

インタビューの様子

03MBLだから達成できたこと

誰もがあきらめず、
「できる」道を探し続けた。

プロジェクト発足から保険収載まで1年2ヶ月という驚異的なスピードで終えた本件。その成功の要因とは何だったのか?

伊藤本件は短期間での上市に加え、課題も多く、「できない理由」を探すのは簡単であったと思います。しかしプロジェクトメンバーから「できない」という声が上がったことは一度もありませんでした。困難を前にしても解決への道を探し、リカバリーする姿勢で臨んでくれたことが、成功の最大の理由であると思います。メンバーはみな他部署経験を持っていることもあり、全員が試薬開発のプロフェッショナルとして、自部署の業務を超えた視点でプロジェクト完遂を目指してくれました。

榑井開発部の工程として「試薬開発」にフォーカスされがちですが、他にも設備導入や原料輸入、法規制対応など、表に現れない部分の負担も相当大きなものがありました。そのような中でも開発指揮を取る柴山さん、冷静な荒川さんペアの立ち回りにはいつも信頼を置いていました。

製品リリース後、黒田は患者会の喜びの声をプロジェクトメンバー全員に共有した。

黒田患者会のホームページに掲載されている喜びの声は、本プロジェクトが患者さんの助けになっていることを、改めて実感させられるものでした。私たちがつくる診断薬は、病気を治すものではありませんが、適切な治療を決定するためのプロダクトです。その重要性は本プロジェクトでひしひしと感じることができました。価値ある製品を最短ルートで世に出すことができ、本当に良かったと感じています。

MBLの根底に流れる静かな情熱が、明日の医療を支えていく。

インタビューの様子
伊藤 裕太
営業本部 本部長
2013年入社
プロジェクト当時:事業推進部。大学では量子力学を専攻し、卒業後は多業種を経験。理系分野への興味に立ち返り、MBLに入社。入社後は主要取引先営業を担当、その後MBLの内部改革を推進。2023年9月より営業本部/本部長に就任。
黒田 慶子
研究開発本部 本部長 兼 執行役員
1996年入社
大学で学んだバイオテクノロジーを活かすため入社。開発、製造、営業を経験し、開発部へ戻る。2019年より研究開発本部 本部長就任。プロジェクト当時は診断薬開発ユニット/ユニット長を兼務。
柴山 真由美
技術生産本部 製品原料部
2000年入社
プロジェクト当時:研究開発本部 診断薬開発ユニット。新卒で株式会社サイクレックスに入社し、2016年にMBLへ移籍。ELISA試薬についてはサイクレックス時代から携わっていた経験有。
荒川 佳穂
研究開発本部 診断薬開発ユニット
2017年入社
研究開発から製造までを自社で実施している安定した組織力に魅力を感じ、MBLに入社。入社後品質管理室に約2年間所属し、2019年から研究開発本部所属。
高浪 貢士
技術生産本部 生産部
2007年入社
農学部卒業後、薬への興味から薬学の大学院に進学。がんマーカーの探索と関連する診断薬開発に強く興味を惹かれ、MBLに入社。開発部を経て現在は技術生産本部 生産部所属。
榑井 俊介
信頼性保証部 品質管理室 グループリーダー
2001年入社
多様な研究へチャレンジする姿勢と、面接時に感じた社員の熱意に惹かれ入社。開発部経験が長く、2018年から品質管理室に異動。

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02
産官学で同じ目的に向けて走った。副作用予測検査キットのスピード開発。

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